国際規格ISO9001:2008を理解するためのコツがある。それは、規格の要求事項は前後に連結した「流れ」があることと、ある要求事項が別の要求事項と相互にリンクしていることを意識して読むことだ。規格を解釈するときにこれらの「つながり」を軽視すると本当の意味を誤解することにもなりかねない。それを避けるには、規格全体の大きな「流れ」をまず理解することが望ましい。下図は国際規格の全体像を示し、品質マネジメント・システムは、四つの基本プロセスにより構成されている。経営者の責任プロセス、資源の管理プロセス、製品の実現プロセス、測定、分析および改善プロセスがそれである。中小規模の企業には、やや荷が重いプロセスも含まれるがうまく工夫すれば簡素化できる。この投稿以降では、いかにして簡素な品質マネジメント・システムを構築するかに焦点を当てながら国際規格の要求事項を解説する。
品質マネジメント・システムを構成する四つの基本プロセスは以下のように要約できる。
品質マネジメント・システム
各企業の業務には何があり、それらがどのように連結され、これらをいかに管理するかを決めるように要求している。また、品質マネジメント・システムの基本となる文書化に関して規定し、品質マニュアルや記録となる文書の管理をいかに行うかを決めるように要求している。
経営者の責任
品質マネジメント・システムの運営は、組織のトップマネジメントの責任の下で行われる。トップマネジメントは、企業の戦略的なレベルでの顧客の要求内容を十分に理解し、法的な要求をも含めてその充足に関してコミットメントすることが求められている。トップマネジメントは、品質方針を設定し、その方針を達成するための目標を掲げ、いかに目標を達成するかの計画を作成しなくてはならない。さらに、トップマネジメントは内部コミュニケーションを持ち、品質マネジメント・システムを定期的にレビューすることにも責任を持つこと。
資源の管理
業務にたずさわる社員と設備や職場に関して何をするかが主題となっている。当然ではあるが業務を果たせる能力が社員に求まられる。意識や自覚がなくては確実でよい仕事はできない。社員が働く環境を整えなければ、顧客が求める製品品質やサービスの質は確保できないし、顧客の期待を裏切ることも起こりうる。人と環境・設備の管理に関わるプロセスの要求事項である。
製品の実現
あまりなじめない表現ではあるが、製品を生産したりサービスを提供したりするには必ず必要となる仕事やそのやり方に関する一連のプロセスが規定されている。顧客からの注文を受け、材料を手配し、製造し、検査し、出荷するまでのすべての過程が対象となる。サービス業であるレストランならば、顧客から料理の注文を受け、調理場に伝え、シェフが料理を作り、テーブルに運び、勘定書きを渡すまでが実現プロセスとなる。
測定、分析および改善
製品やサービスに対して顧客がどう受けとめたのかを企業である限り確かめないはずがない。しかし、確かめるための手段が、たとえば営業担当者の報告であったり、売上げ金額の上下を目安にするなどであれば危険としかいえない。顧客満足を測定し、製品やサービスに何が欠けているのか、どうすればそれを解決できるのかを体系的に取り組むことを示唆している。絶え間ない顧客の変化に対応するためには継続的改善は、企業にとっての永久の目標である。
(拙著「やさしくわかるISO9001」(技術評論社 2003年発刊)の原稿を加筆修正)


