責任と権限


5.5 責任、権限、およびコミュニケーション

5.5.1 責任と権限

経営者のトップは、社内のすべての人がどのようなことを行う責任があり、何を行う権限が許されているかを決める。また、決められた責任と権限を他の人がよく理解できるようにコミュニケーションされていること。

中小企業で業務内容を記述した業務記述書を使っているところは少なかろう。そのような書いたものがなくともきちんと仕事を進められるのが日本企業である。同じ日本人が集まった職場では阿吽(あうん)の呼吸で理解しあえると考えるからであろう。しかし、小規模な企業といえども国際規格のこの要求事項を充たすには二つのことを行う必要がある。

  • 各人が何をすることが分かるように組織図を作る
  • 「キーとなる業務」の責任者の責任と権限を品質マニュアルに記載する

責任者の氏名ではなく職名に対して、どのような業務の責任と権限があるかを簡単に文章にすればよい。たとえば、以下のような一覧表である。大企業でも兼務が当たり前のように採用され一人の人がいくつかの業務を担当する。その場合には、兼務する業務を含めて文書化する。

部門長

責任と権限

営業部長

製品情報、受注サービス業務、および顧客関連サービスの責任に関して顧客とのコミュニケーションのための業務を行う。

         購買部長

資材およびサービスの供給者との連絡を適切に保ち、当社の必要とする資材およびサービスを購入する業務を行う。

         生産部長

生産工程を計画し、工程が管理された状況で生産が行われるように管理監督する。また、営業部長の要請により顧客への情報提供を行う。

責任と権限を明確にしないことが企業風土として定着している日本では、社員各人の責任と権限を文書に明記するなどなじめないことかもしれない。それだけでなく、責任と権限を決めてしまうと組織活動の柔軟性が失われ動きが取れなくなる危険性があるのではと危惧する人もいる。しかし、外資系企業の中で長年勤めてきた経験から言うと、現実には単なる危惧に過ぎない。責任と権限にはどのような事態になろうとも対応できる柔軟性のある文言を使うからだ。たとえば、必要なる場合には「誰を補佐する」や「誰かに権限を委譲できる」などがそれである。心配することは不必要で「責任と権限の明確化された」社内活動に慣れるに越したことはない。これが明確でない職場で働くことの方が不安になる。日本人の意識変革が求めれている分野でもある。(拙著「やさしくわかるISO9001」(技術評論社 2003年発刊)の原稿を加筆修正)

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