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5.6 マネジメント・レビュー 5.6.1 一般 経営者のトップは、品質マネジメント・システムを一定の間隔でレビューし、持続するに適し、妥当で、有効であることを確かめる。マネジメント・レビューでは、以下の事柄を評価することを含める。
レビューを何時行ったか、何が議論されたかを示す議事録を残すことが必要である。 5.6.2 レビューのインプット マネジメント・レビュー会議はスケジュールに基づいて定期的に開催する。会議で以下の事柄が討議できるようにインプット情報を準備すること。
5.6.3 レビューのアウトプット 品質マネジメント・システムの効果を改善できるとトップマネジメントが会議の結果の一つとして決定したならば、そのためにとられなくてはならないフォローアップ活動は何かを明らかにすること。すなわち、この改善活動によって顧客の要求をより満たすことができるか、品質マネジメント・システムを強化するために必要となる経営資源は何かを決めることでもある。 |
マネジメント・レビューは、企業の目標を達成するためのキーとなる活動である。品質マネジメント・システムが有効に機能しているならば、通常は製品とサービスの質に対する顧客の満足度が向上する。ところが、顧客のニーズや期待は絶えず変化する。適時にこの変化に対応しない限り顧客の不満が生じるはめになる。品質マネジメント・システムには絶え間なく改善する余地が残されると言われる所以である。従って改善のための何らかの方法を見出すことは経営者の重大な責務である。国際規格ISO9001:2008のプロセス・モデル図の大きな矢印がこの役割を示している。

マネジメント・レビューをどの程度の頻度で行うかの決まりはない。しかし、年二回行うと決めたならば、なぜ二回でよいのかの理由を監査機関に説明できるように心得るべきである。たとえば、事業業績の見直しが年二回行われ、事業の性質や顧客の性格からそれほど多くの頻度は必要ないなどである。事業の見直しと同じでマネジメント・レビューを四半期ごととするのが望ましいと著者は思う。
「品質マネジメント・システムの計画作成」で指摘したように品質マネジメント・システムを企業の経営システムの一部と位置づけることが望ましい。それを具現化するには、品質マネジメント・システムに影響を与える経営環境の変化、市場の情報、競合他社の動向、新技術の市場化、国際化の進展などを下図で示すようにマネジメント・レビューのインプット情報として取り込むことよい。
国際規格ISO9001:2008のマネジメント・レビューを独立した会議として位置づけるのではなく、経営方針、売上金額、経費、利益などを討議検討する「経営会議」の一環として開催すればより効果的な結果を生むと考える。もちろん、改善プロセス・サイクルを回転させるエンジンの役割を強化するために独立した活動としてマネジメント・レビューを行うことであっても何ら問題はない。どちらを選択するかは企業の判断だ。
マネジメント・レビューをどのような形態で開催するとしても、以下の事項を討議しなければならない。
- 前回のマネジメント・レビューで決定したフォローアップ活動の結果はどうだったか?
- 前回のマネジメント・レビュー以降に実施された内部・外部監査の結果はどうだったか?
- 監査時に発見された不適合に対する是正処置は予定通り実施されているか?
- 予防処置として何が実施されたか?
- 現在の品質方針が適切であるか?
- 現在設定されている品質目標は適切であるか?新規の品質目標を設定する必要はないか?
- 「キーとなる業務」の成果を測定した結果はどうだったか?有効に機能していると言えるか?
- 機能面で有効でなければ、文書化されているプロセスの手順は変える必要はないのか?
- 顧客の要求を充たすために製品やサービスの改良は必要か?
- 人的資源の配分、現行の設備と作業環境、現在使用している資材は適切か?
- 教育や技能トレーニングのニーズは何か?
- 下請け企業や協力企業はどのような実績を示しているか?
- 品質マネジメント・システムの改善の余地はあるかないか?あれば、どこの何か?
出席者はこれらの内容を討議できる人たちであれば誰でもよいが、経営者と管理責任者は必ず出席すべきであろう。管理責任者が各部の活動内容を説明することも可能ではあるが、各部門の責任者各自が用意した資料で説明すればいっそう効果的になる。しかし、出席者の数が多くなると議論が交錯し結論が曖昧になる危険性もある。下請け企業の代表者を出席者に加えることも時にはよいかもしれない。ただし、問題を追及するために各部門の責任者や下請け企業の代表者を被告席に座らせることは絶対に行ってはならない。ことさように、管理責任者がマネジメント・レビューの事前準備に果たす役割は大きく重要である。管理責任者の力量が問われる所以でもある。
マネジメント・レビューの結論は、下に引用した記入事例に示すような議事録として残される。誰が何を言ったなど詳細な文言は必要なく討議の要点と結論を簡潔に記載する。国際規格ISO9001:2008は、システムとプロセスの有効性の改善、製品やサービスの改良、経営資源の必要性に関して決定し、「とるべき行動」は何かを決めるように求めている。特に、改善余地の「ある」「なし」は明瞭にする。たとえば、製造工程を改善したことで品質問題は減少したので、現行の検査方法を変更することで工数を削減できないかなどを追及することなどである。ただし、マネジメント・レビューは定期的に開催されるので、緊急性の高い顧客クレーム対策の決定プロセスに使うのは危険である。あくまで、顧客クレームの傾向や性格を分析した結果として中期的に取り組むべき対策に関して決定を行う場がマネジメント・レビューである。マネジメント・レビューの実行プロセス自体も評価し、改善を要する場合もあることに留意すべきである。外部監査を意識して形式的に実施されるならば、時間の無駄になるだけでなく、社員からの信頼を失う結果を生むからである。
マネジメント・レビューに使われた資料は議事録に添付すればよい。議事録そのものは別として討議された内容と結論の概要は、社内掲示板やホームページに掲載するなどが望まれる。社員へのコミュニケーションの一つである。(拙著「やさしくわかるISO9001」(技術評論社 2003年発刊)の原稿を加筆修正)


