データの分析

8.4 データの分析

企業は、品質マネジメント・システムの適切性および有効性を実証するために、また品質マネジメント・システムの有効性の継続的な改善可能な余地はどこかを評価するために適切なデータを明確にし、それらのデータを収集し、分析すること。これには、モニタリングと測定の結果から得られたデータ、およびそれ以外の該当する情報源からのデータを含めること。

データの分析は、次の事柄に関連する情報を提供すること。

  • 顧客満足

  • 製品の要求事項への適合性

  • 予防処置の機会をうることを含め、プロセスと製品の特性、および傾向

  • 供給者


顧客満足の測定、内部監査の実行、プロセスと製品のモニタリングと測定、不適合製品の管理を通じて多くのデータが集積される。これらのデータは、品質マネジメント・システムの適切性や有効性を実証できる。たとえば、顧客苦情が頻発に起こり、顧客の満足度合いは一向に向上していないことや工程内での不適合品の発生率が高くコスト負担が大きいなどの現象があれば、品質マネジメント・システムそのものが有効に機能していないことを示唆している。内部監査を実施することで品質目標が社員によって支持されていないことが判明することもある。しかし、このような問題解決にはデータの分析は欠かせない。データの分析を十分に行わず、思いつきの解決策に飛びつき結果に落胆することの繰り返しもままある。これを避けるためのステップが、データと情報の収集と分析である。


「プロセスのモニタリングと測定」の項では、収集と分析の対象となるデータと情報の多くを提示した。数多くのデータや情報は社内に存在するが、これらが改善のために生かされていないことが真の問題なのかもしれない。国際規格は、データと情報の分析を強制し改善に供することを求めている。ただし、「どのように」分析するかは一切言及していないので、手順は必要ではない。一方、データの分析には、何がしかの統計的手法を利用することは避けられないであろう。たとえば、製品の品質管理のためのXbar-R管理図、工程能力指数の採用や相関係数の算出などである。とはいえ、中小企業でのデータ分析手法の利用が以下のように限定的であったとしても仕方がない。

  • 良品率、工程内不良率などのデータを時系列でプロットし作業の安定性を求める。
  • 協力企業の納入した製品の不具合件数を時系列データとして処理する。
  • 顧客苦情件数を苦情内容別グラフに示す。

国際規格は「どの程度高度に分析を行うか」を問わない。自社にとっていま何が問題であるかを知るためのデータが収集され分析されていればデータ分析はできていることになる。何が問題かを知らずに漫然と企業を運用することなどあり得ない。経営分析の形で厳格かつ緻密に実行している企業もあれば、経営者が自己分析することで済ませてところもあろう。顧客苦情が人的要因であると判断したならば、その判断の基礎データを誰にでも分かるように表に出すことになるだけである。国際規格の求めるデータの分析結果は、マネジメント・レビューでの討議資料として提供される。レビューのプロセスを経て次項の継続的改善の活動を決定することになる。(拙著「やさしくわかるISO9001」(技術評論社 2003年発刊)の原稿を加筆修正)